レセコンデータを
医院経営に役立てよう
現在、大部分の病医院において、レセプトコンピュータ(レセコン)が導入されているものと思います。このレセコンの主たる利用目的はもちろん診療報酬の請求業務ですが、実はもうひとつ、経営分析資料としても大いに活用する事が出来ます。それは、レセコンから出力される「医事データ」を分析して経営に生かしていくという事です。
医事データからの分析・対策
- 医事データ
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- 住所、年齢、性別、実患者数、 延患者数、初診患者数、診療行為別集計 など
- 現状の把握と分析
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- ●男女比率
- ●年齢構成
- ●来院患者数推移
- ●新患・再診数推移
- ●来院患者エリア分布
- ●患者1人当たり収益 など
- 増患・増収対策
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- ●男女比率から…院内インテリア、雑誌、種類等の選別
- ●年齢構成から…診療時間・休診日の見直し、新たな医学機器の導入検討
- ●来院患者エリア分析から、広告の見直し、検討 など
医事データの活用方法
レセコンから出力される医事データは多岐にわたりますが、医事データから把握・分析できる事、その結果から講じる増患・増収の対策を簡単にまとめています。その中から、具体的な例をいくつか挙げてみます。
(1)診療所所在地の人口構成と自院の来院患者構成を年齢別で比較する。
例えば、その地域の中高齢者人口割合に比べ、自院の中高年者の来院割合が低ければ、中高齢者層が来院しにくい状況はないかを検討し、院内勉強会、地域の健康講座など、地域への積極的な認知活動を通して集患対策を立てていきます。 また、新規開業の場合、導入が一般的になりつつある予約システムは、パソコン、携帯電話が普及している現在、「待ちたくない」患者層には大きな来院動機につながるものと思われます。
(2)来院患者エリア分布を把握する。
来院患者エリア分布は、医事データの住所から作成できます。これは、どの地域からどれだけの来院数があるのかを把握し、広告の範囲や手段の見直し、競合施設の認識、院内設備の見直しなど、増患対策の参考資料として活用できます。
具体的には、自院の実質的な診療圏を把握して、ターゲットとなるエリアを明確にします。その上で重点地域への広告掲示、広告媒体の選定などを行い、効率的な資金の投下を行う事で増患対策につなげます。
(3)来院患者の年齢別、性別構成を把握する。
この分析結果に合わせて、キッズスペースの設置、書籍類の選択など、患者さんに合ったアメニティの提供を行います。
会計データとリンクしてより具体的に
これらの資料は、一般的には会計事務所や医療機器メーカーといった外部のサポートを受けて作成します。こうした分析は、できれば毎年、少なくとも数年に1回、定期的に行う事で患者さんの動態がよくわかり、変化を迅速に把握し、その対応をする事ができます。
来院患者数推移や診療行為別集計などは、医事データを毎月、院内でパソコンソフトに入力するだけで簡単に集計でき、それを時系列で比較することにより、自院の傾向を把握し、対策を立てる際に活用できます。また、会計データと医事データをリンクさせることで、増収、減収の原因を明確にすることができます。例えば、外来収入は次の算式で表せます。
外来収益=患者1人1日当たり収益×延患者数(実患者数×平均通院回数)
毎月の売上金額は会計で分かるので、あとは実患者数と述べ患者数さえ分かれば売り上げが増えた、または減ったのは「患者1人1日当たり収益」「実患者数」「通院回数」のどれが原因だったのかを把握できます。原因を明確にすることで、現状を把握でき、そして対策を打っていくのです。これは、検査をして病気の原因を見つけ、それに対して治療する事と同じです。